ゴルフレッスン(6)効果的な練習方法、レンから学ぶ【講師 スコット・サケット(Scott Sackett)氏】
PGAツアーゴルフアカデミーのチーフインストラクター、スコット・サケット。
世界最高峰PGAツアー公認メソットに基づいた丁寧で解りやすい指導は、ツアープロも絶大な信頼をよせています。
あなたもPGAツアー公認メソットでワンランク上のゴルフを目指しましょう。
ナレーション:ハンディキャップ15、スライスに悩むボブ!
ハンディキャップ28のノーリーンもやはり課題はスライスの克服。
一方、フックが悩みと言うハンディキャップ12のティム。
前回のラウンドレッスンでは、これまでに学んだことを実践で試してみた3人の生徒達。
コースに於ける、様々な状況からのショットも体験しました。
覚えたてのプリショットルーティーンはまだ十分に身に付いておらず、プレーのリズムを乱す事もありました。
しかし、辛抱してやり続ければ、必ず成果は表れます。
レッスン11回目の今日は、効果的な練習方法について学びます。
【Lesson11】~効果的な練習方法(Effective Ways to Practise)~
スコット・サケット:皆さんこんにちは、それでは今日も早速レッスンを開始したいと思います。
これから勉強する内容は、パッティングからドライバーまで全てのショットに関するものです。
皆さんは、ワンランク上のゴルフを目指してここまで頑張ってきましたが、今日はこれから皆さんが次のレベルに上がれるかどうかを決める、非常に重要なテーマについて学んで行きます。
練習で大切なのは2つのポイントです。
1つ目は、今日の課題は何か!ということ。
そして2つ目は、その課題を達成できたか!ということです。
もしその答えが「ノー」だったり、あるいは「分からない」だったら、その練習は完全に時間の無駄だったと言わざるを得ません。
ゴルフには、非常にたくさんの内容が含まれていますので、1~2時間の練習時間の中で全てをやろうとしないで下さい。
例えば、これはぜひみなさんに実践して欲しいのですが、半分の時間をショートゲームに割いて、残りの半分はショットの練習をすると言う風に割り振り、次の日の練習ではまた違う内容に取り組む。
このように、その日の課題を決め、それを一つずつ達成して行くんです。
そして最も大切なのは、練習を終えた時の達成感です。
充実した気持ちを練習場からコースに持ち込む事ができれば、「あれだけ練習したんだから、今日は絶対いいプレーができる」と自分に自信が持てるのです。
ゴルフと言うスポーツでは、どういう訳か誰もが本能的にドライバーを300ヤード飛ばしたいと思うものです。
プロのバスケットボール選手は、プレッシャーの中でフリースローを決めるために、毎日コツコツと練習を積み重ねています。
でも、アマチュアゴルファーは時間を掛けずに、直ぐに上手くなろうと考えるのです。
まず自分の目標を決め、そのためにどんな練習が必要かを考えて下さい。
ナレーション:練習で最も大切なのは、その日の練習課題を明確にする事です。
まず最初に自分の目指す目標を設定し、そのためにはどのような練習をすればいいのかという計画を立てます。
そして日々の練習では、その日に取り組むテーマを明確に定め、一つ一つの課題を確実に達成して行くようにします。
そこで重要な役割を果たすのが、練習内容をメモに記録しておくことです。
スコット・サケット:もう一つ大切なのは、練習を終えた後にその日のポイントをメモに記録しておく事です。
「今日はグリップをいつもよりストロングにした」とか、ノーリーンの場合は「腰のスライドが上手くできた」とか、その日のポイントをいくつかメモに残しておくんです。
そうすると次に練習する時に、メモを見て色々と思い出す事ができるんです。
その日の練習で上手く行った事をメモしておけば、一ヶ月でかなりのポイントが貯まります。
そして調子の悪い日には、このメモを見れば「そうかグリップの強さが悪かったんだ!」と思い出すんです。
人間に物忘れは付きものですからね。
ナレーション:では、実際の練習は具体的にどのように進めて行けば良いのでしょうか?
スコット・サケット:常に明確にしておかなければいけないのは、今スイングの何に取り組んでいて、そのために何をしなければいけないかと言うこと。
そしてここで重要なのはチップショットやピッチショットは、フルスイングの縮小版だと言うことです。
もし、インパクトの矯正に取り組んでいるんだったら、練習するのはチップショットあるいはピッチショットが良いでしょう。
なぜなら、スイングが小さくてもインパクトはインパクト!
チップショットだろうと、ピッチショットだろうと、7番アイアンだろうと、ドライバーだろうとインパクトは全て同じです。
したがって、この事は私自身の信念なんですが、とにかく30ヤードから50ヤードくらいの短いショットをたくさん練習して下さい。
40ヤードのショットがちゃんと打てなければ、240ヤードのショットが打てるはずがありません。
その理由として、スイングの練習をする時に、我々は何を体に覚えさせようとしているのでしょうか?
ティム、どうですか?
ティム:安定した打ち方!
スコット・サケット:そうですね! 他に何かありませんか?
ボブ:リラックスしてなるべく固くならないで、それからしっかり打つ!
スコット・サケット:それも大切ですが、究極的にはこういう事です。
ノーリーンのスイングはこう!、ボブも同じ!、そしてティムはこうですね!
それを変える事と言うのは、筋肉に新しい動きを記憶させる作業なんです。
スイングと言うのは、皆さんも私もほとんど無意識の動きです。
体は、筋肉の記憶に従って動くんです。
それを変えようとするのであれば、クラブがどうやって動くのかを100パーセント意識しなければなりません。
私の場合、ゆっくりスイングしなければ、クラブの動きを自分の意識でコントロールする事はできません。
ですから、小さいスイングで練習することは、ものすごく重要なんです。
ナレーション:アマチュアゴルファーは練習の際に、ついつい力一杯フルスイングしたくなるものです。
しかし最も大切なのは、小さいスイングで正しい感覚を体に覚えさせること。
特にスイング矯正中は、100パーセントの意識の中で、新しい動きを筋肉に刻み込まなければなりません。
そのためには、ゆっくりとしたスピードで、小さいスイングを繰り返す事が最も効果的な方法です。
小さいスイングの練習で、正しい身体の動きとインパクトの感覚を身に付ければ、直ぐに安定したフルスイングができるようになります。
スコット・サケット:さぁて、次です。
練習方法の一つに、8対2の法則と言うのがあります。
練習の8割は技術的な事に割いて、残りの2割でプリショットルーティーンを練習します。
ターゲットを確認し、中間目標を決めて最後にボールを打つんです。
練習場でスイングの事だけ考えてボールを打っていると、いざコースに出た時にどうやってピンを狙ったらいいか、分からなくなってしまうのです。
そこで練習の時に、10球単位でボールを打つようにします。
そのうち8球はスイングを考えて、残りの2球はプリショットルーティーン。
そうやって10球ずつボールを打つんです。
また、ほとんどのツアープロがやっている方法が、偶数・奇数の法則です。
月曜日は、5番・7番など奇数のクラブを練習して、火曜日は4番・6番など偶数のクラブ。
そして水曜日は再び奇数です。
この方法で、全てのクラブを万遍なく練習できるんです。
ではこれから、実際に練習を開始しますが、今日はアライメントステーションを使って、最初はピッチングウエッジか9番アイアンから始めて下さい。
そしてまず、練習の目的をはっきりさせておく事が大切です。
ウォームアップのためなのか、それともスイングに取り組むためなのか、大きな違いですね。
ラウンド前の練習の場合は目的は十分に体をほぐすことと、その日のインパクトの感じをチェックすること。
ショットの調子を見て、ラウンドの参考にするんです。
でも、スイングに取り組む時は、必ず課題を明確にします。
それでは、短いクラブから練習を始めましょう!
まず、アライメントステーションを使って、ボールの位置をチェックします。
それから、最初の10分か15分はピンを狙わずに、10ヤード四方くらいの大まかな目標に向かって打って行きましょう。
なにか質問はありますか?
ボブ:よく分かりました。
スコット・サケット:じゃぁ、始めましょう!
ナレーション:練習の大切さを改めて痛感した3人の生徒たち。
番組の後半では効果的な練習を実際に体験します。
でもその前に、レン・マティースのワンポイントアドバイスのコーナーです。
PGAツアーきっての堅実なプレーヤーとして知られる「レン・マティース(Len mattiace)」
2002年ツアー2勝、2003年マスターズ2位のマティースから、アマチュアゴルファーに贈るワンポイントアドバイス。
今回は練習方法です。
レン・マティース:一口に練習と言っても、様々なものがあります。
例えば、練習グリーンで何球も続けてパットを打つ事がありますが、それは自信を高めるための練習です。
全く同じラインの2mのパットでも、続けて入れば自信が付くものなんです。
また、色々な場所からボール1個で、パットの練習をする時もあります。
時間を掛けてラインを読んで素振りをして、実際のラウンドと全く同じようにプリショットルーティーンもやるんです。
グリーンの速さや距離感など、全ての感覚をチェックするための練習です。
それから、練習場では時々スイングのチェックをします。
テイクバックの腕の動きを何回も繰り返して、筋肉に覚えさせるんです。
これは、よく練習場でやるんですが、ドライバーで30球、自分で想定したフェアウェイに向かって打つ練習です。
1球ごとに時間を掛けて、できるだけ真っ直ぐ遠くまで飛ばすようにします。
打ったボールは全てキャディーが位置を確認して、ショットの傾向をチェックするんです。
30球なんて直ぐに打ち終わると思うかもしれませんが、実は1時間近く掛かるんですよ。
僕の場合は、たまにフックしてしまう事があります。
30球打ち終わったあと、自分では26球フェアウェイをキープしたと思っていたのに、キャディーに訊いたら14球だったって事もありますよ。
自分のショットを見極めるのは難しいですねぇ。
色々なショットを打つ練習もしますよ。
例えば、ピンがここに合ったらフェードでピンを攻めたり、ピンの左を真っ直ぐ狙ったり。
たまにはピンをデッドに攻めますけどね。
でも、トーナメントではピンの位置が厳しいので、いつもピンを狙う訳じゃありません。
4番アイアンでグリーンセンターに乗せて、パーで十分というホールもあります。
フレッド・カプルスがマスターズに優勝した時の12番、右サイドのピンに対して彼は左を狙っていたのですが、実際にはピンを攻めてしまいました。
ピン以外の場所を狙う冷静さに欠けていたのでしょう。
でも、ジャック・ニクラウスも言っているように、あのホールはピンが右の時はグリーンセンター狙いが鉄則。
彼もそれは分かっていたのですが、ついピンを攻めてしまったのです。
だから僕は左サイドのピンに対して、グリーンセンターを狙う練習もしています。 練習場でもね。
質の高い練習とはこういうもので、そうやっていると時間を忘れて
練習に没頭できるんです。
(アドバイスコーナー終了)
ナレーション:さて、サケット先生の指導に従って練習を開始した生徒たち。
まずは、アライメントステーションを使って、しっかりと基本を確認します。
スイングを崩す最大の原因は、人間の感覚のズレ。
特にアライメントに関しては、自分では気が付かないうちに構える方向がズレて来るもの。
定期的にチェックして、常に正しい感覚をキープして下さい。
クラブに応じたボールの位置も、アライメントステーションで確認しておきましょう。
スコット・サケット:まず気を付けるのは、ターゲットです。
具体的な目標は定めていませんね?
ノーリーン:はい。
スコット・サケット:アライメントステーションの方向はだいたい練習場の真ん中ですが、今のところ特に目標は決めないで打って下さい。
(ノーリーン実打)
いいですよ、今のは良い当たりでしたね。
ノーリーン:はい!
スコット・サケット:じゃあ、もう一回打ってみましょう。
ナレーション:練習を開始してからしばらくの間は、リラックスした状態で体の感覚を呼び起こす事が最も重要。
そのために、最初はターゲットは決めずに、だいたいの方向に向かって打っていくようにします。
そして体がほぐれて来たら、具体的なターゲットを設定。
弾道の法則に従って、ショットの結果からスイングの問題点をチェックするようにします。
(ティム実打)
スコット・サケット:ボールはどっちの方向に飛び出しましたか?
ティム:左!
スコット・サケット:そして、そこから更に・・・
ティム:フックしました。
スコット・サケット:つまりスイングの軌道は?
ティム:アウトサイドイン。
スコット・サケット:フェイスは?
ティム:クローズです。
スコット・サケット:はい、スイングの軌道は良くなったので、もう少しウイークグリップにして、開きながらテイクバックしましょう。
ティム:わかりました。
ナレーション:今度は8対2の法則を使った練習です。
まず、スイングの動きや体の感覚を意識しながら、8球打ちます。
次の2球はプリショットルーティーンを組み込んで、実際にコースでプレーしているような感じで打ちます。
(ボブ実打)
スコット・サケット:あ~~、ナイス! 良かったですよ。
それでは、次はもう少し長いクラブで打ってみましょう。
ここまでは8時から4時と9時から3時のスイングでした。
次は7番アイアンです。
今日は奇数の日と言うことにして、7番、5番、3番、そしてフェアウェイウッドの練習をしましょう。
アマチュアの中には、練習場でいきなりドライバーから打つ人がいるという話をしましたが、アイアンから始める人でもほとんどティーアップしませんよね。
でも本当は?
ティム:ティーアップする!
スコット・サケット:そうです!
ではティーアップする事で、練習にどのような効果がもたらされるのでしょうか?
ノーリーン:ボールを気にしないで、スイングに集中できるから!
スコット・サケット:その通りです。
ボールを気にせずに、スイングできるんです。
いいですか、練習の時に一番意識しなければいけないのは、スイングです。
ですから、この事は本当に大切な事なんです。
練習を始める時は、ショートアイアンであろうと、ウエッジだろうと、ティーアップしたボールで練習して下さい。
自信がついたらティー無しでも構いませんが、最後はまたティーアップします。
私たちは、ティーアップしてボールを打っていますよね。
それなのに、ちゃんと地面にはこのようにディボットができています。
この事は、ダウンブローで打っている証拠なんです。
ティーアップしてもしなくても、スイングの軌道は同じと言うことです。
唯一の違いは、ティーアップした方が少し楽に打てるようになることぐらい。
そして、ノーリーンが言ったように、練習では正しいスイングをする事だけが重要なんです。
それでは、7番アイアンを使って、自分のペースで練習して下さい。
ナレーション:インサイドアウトのスイングで、フックに悩むティム。
グリップをウイークにして、スイング軌道をアウトサイドインに変える事に取り組んで来ました。
(ティム実打)
スコット・サケット:凄くいいですよ!
ティム:いいですねぇ!!!
スコット・サケット:今のショットで、2ヤードくらいのフックです。
ティム:かなりスクエアですね。
スコット・サケット:じゃあ、もう1球。
もう少しウイークにして、もう少しロールしながらテイクバックです。
練習場なんですから、スライスが出るまでやってみましょう。
ティム:分かりました!
スコット・サケット:プリショットルーティーンも忘れずに。
ナレーション:新しいプリショットルーティーンに戸惑っていたティムは、サケット先生の提案で元のやり方に戻しました。
先に素振りをしてから中間目標を決めるのではなく、中間目標を決めてからアドレスに入る前に素振りをします。
大切なのは、本人にとって一番やりやすい方法を選ぶことです。
(ティム実打)
スコット・サケット:ナイス!!! 凄くいいですよ!
これを、コースで試してみましょう。
プリショットルーティーンは元のやり方に戻して、凄く良くなったと思います。
そして、Vの字はアゴを指すくらい思いっきりウイークにして、腕のロールをもっと極端に意識して下さい。
ティム:この方が、テンポが良くていいです。
スコット・サケット:そうですね!
ナレーション:アウトサイドインのスイングで、スライスに悩むノーリーン。
彼女の課題はティムとは正反対です。
スコット・サケット:両手をくっつけてグリップしましょう。
アドレスの姿勢はいいですよ。
あとは、ダウンスイングの感じを覚える事です。
こうやってクラブをインサイドから、インサイドから、インサイド、インサイド、インサイド・・・。
これはアウトサイド!
こっちが、インサイド!
いいですか!
じゃあ、今の感覚を忘れないうちに、もう1球打ってみましょう。
(ノーリーン実打)
ノーリーン:おお!!!
スコット・サケット:ん~~~!!! いいですよ!
皆さん凄く上達しました。
グリップ、ポスチャー、スイングの軌道、全部です。
では、質問です。
今日は皆さんの動きがとても良かったんですが、課題を意識して大げさにやってみたんですか?
ボブ:たぶん練習の成果だと思います。
スコット・サケット:なるほど。
ティムはどうですか?
ティム:僕はとにかく言われたことを大げさにして、今までのスイングとどう違うかを試しました。
確かに大げさにやりましたね。
スコット・サケット:しっくり来ないくらい大げさに?
ティム:普段とはかなり違いましたよ。
スコット・サケット:でも、ショットを見れば結果は朗かですね。
じゃ、ノーリーンは?
ノーリーン:だんだん自分のものになってきた感じがします。
ちょっとだけですけどね・・・
スコット・サケット:スイングの改造は大変な作業です。
常に、グリップ、ポスチャー、アライメントに気を付けて、パーフェクトなスイングを身に付けるよう頑張って下さい。
【今日のおさらい】
ナレーション:それでは今日のおさらいです。
■練習で最も大切な事は、その日のテーマを明確にし、一つ一つの課題を確実に達成して行くこと。
■スイングチェックの練習では、ティーアップしたボールを短いクラブで打つのが効果的です。
■8対2の法則を利用して、練習の中にプリショットルーティーンを取り入れれば、より実践的な練習が可能となります。
(おさらい終了)
スコット・サケット:ゴルフの上達のためには、定期的な練習が欠かせません。
単純な事ですが、これがなかなかできないんです。
レッスンを受けたら、直ぐに上手くなりたいと言うのは現実的な望みではありません。
スイングの改造には時間が掛かると言うことを、忘れないで下さい。
ナレーション:PGAツアー公認のメソッドで、ワンランク上のゴルフを目指すPGAツアーゴルフレッスン!
次回は、この番組ではすっかりお馴染みとなったレン・マティースをゲストに迎え、ツアープロからの貴重なアドバイスを皆さんにお届けします。
どうぞお楽しみに。
【Lesson12】~レン・マティースから学ぶ(Len mattiace’s Tips)~
ナレーション:ハンディキャップ15、スライスに悩むボブ!
ハンディキャップ28のノーリーンも、やはり課題はスライスの克服。
一方、フックが悩みというハンディキャップ12のティム。
前回のレッスンで3人の生徒たちは、効果的な練習方法を学びました。
練習で最も大切な事はその日のテーマを明確にし、一つ一つの課題を確実に達成して行く事です。
スイングチェックの練習では、ティーアップしたボールを短いクラブで打つのが効果的です。
また8対2の法則を使って、プリショットルーティーンの練習もお忘れなく。
日々の練習に目的意識と計画性を持たせ、焦らずに時間を掛けて取組むことによって、必ずゴルフ上達への道は開けます。
レッスン12回目の今日は、ツアープロのレン・マティースをゲストに迎え、ゴルフに関する様々な質問に答えてもらいます。
【Lesson12】~レン・マティースから学ぶ~
ナレーション:PGAツアープレーヤーの「レン・マティース(Len mattiace)」
プロ13年目の2002年には日頃からの地道な努力が実を結び、念願のツアー初優勝を含む2勝を達成。
ツアー部門別ランキングでは、バンカーからのサンドセーブ率と平均パット数でしばしば上位に顔を出すショートゲームの達人です。
スコット・サケット:皆さんこんにちは。
3人:こんにちは!
スコット・サケット:今日は素晴らしいゲストをお迎えしました。
PGAツアーのトッププレーヤーの一人で2002年の日産オープンとフェデックス・セントジュードクラッシクで優勝。
2003年はプレーオフの末マスターズ2位の成績を収めた、レン・マティースさんです。
レン・マティース:よろしくお願いします。
スコット・サケット:今日は生徒の皆さんから、色々とあなたに質問があると思うんですが、まずは私から一つ質問させて下さい。
我々は、ビデオを使ってスイングをチェックして、例えばアウトサイドインとかインサイドアウトの軌道を直して行きますが、アマチュアは1週間も経つと「これでいいや!」と思ってしまうんです。
あなたの場合、世界的に有名なコーチ「ジム・マクリーン」に見てもらっていますが、長年同じテーマに取り組んでいるそうですね。
それほど時間の掛かる課題なんですか?
レン・マティース:スイングの課題と言うのは、簡単に良くなるものではありません。
ゴルフと言うのはとても複雑なスポーツで、スイングには様々な動きが含まれています。
僕の場合は、約10年間スイングの改善に取り組んでいます。
しかも、練習は毎日やっている訳ですから、本当に時間が掛かります。
毎日ボールを500球くらい打ってるし、トーナメントにもたくさん出場してるのに、それでもスイングを改善するのには10年以上も掛かるんです。
例えば、僕の課題の一つは全てはセットアップに関する事なんです。
いつも力強い構えができるように心がけているんですが、僕の場合時々背中が丸まった構えになってしまったり、腰が前に出たりすることがあるんです。
だから、常にしっかりと構えるように気を付けて、それさえできればいつでも安定した力強いスイングをすることができるんです。
【正しいセットアップ】
ナレーション:マティースが10年以上掛けて取り組んでいるという、正しいセットアップ。
アライメントの確認も、正しいセットアップには欠かせない大切な要素です。
ツアープロの実力を支えているのは、日々繰り返される地道な練習。
世界のトップレベルで戦うためには、絶対に基本は疎かにできないのです。
スコット・サケット:技術的な問題に取り組んでいる時は、トーナメント期間中の練習はどうするんですか?
木曜日に大会が始まったら、技術的な事は忘れるようにしているんですか?
それとも、大会初日に向けて特別な練習方法があるんですか?
レン・マティース:技術的な練習は、トーナメントウイークの火曜日と水曜日にみっちりやっておきます。
試合中に技術的な事を考えなくてもいいようにするためです。
試合が始まったら、楽しみながらいいプレーをすることに気持ちを集中させるんです。
火曜日と水曜日に練習ができないと、それを取り返そうと思って試合中に技術的な事を考えてしまうので、スコアは悪くなりますね。
それから、室内でできる練習もあるんですよ。
例えばホテルの部屋でも簡単にできるんですが、こうやって鏡に向かってアドレスをチェックしたり、テイクバックでクラブがどう動いているとか、トップの位置とかいろいろチェックできます。
それから、鏡の前でスイングをして、フィニッシュのチェックもします。
しっかりとしたフィニッシュを取る事で、ダウンスイングからインパクトの動きが良くなりますからねえ。
でも、トーナメントが始まる木曜日以降は、スイングの技術的な事に関しては、できるだけ考えないようにしています。
プレーに集中するためです。
スコット・サケット:これからもトーナメントでの活躍を期待しています。
じゃあ、皆さんも質問をどうぞ。
ティムはどうですか?
ティム:ハイ! このレッスンで、プリショットルーティーンについて先生からみっちりと教わったんですが、プロにとってプリショットルーティーンの重要性は10段階でどれくらいですか?
できれば、やり方も見せてもらえると嬉しいんですが・・・。
ナレーション:プリショットルーティーンの大切さを頭では理解していながら、実際にはなかなか馴染めずに困っていたティム。
ここは一つ、ツアープロの意見を参考にしたいところです。
レン・マティース:プリショットルーティーンは非常に大切です。
10段階でランクを付けるとすれば、極めて10に近いですね。
一応、9と言っておきましょう。
我々は、毎ショット必ずプリショットルーティーンを行います。
プロがミスショットする時というのは、大抵プリショットルーティーンをしていない時です。
プリショットルーティーンは、自分をリラックスさせるためのものなのです。
例えば、たった50㎝のパットでも、プリショットルーティーンをやらないで簡単にカップインしようとしたために、外してしまう事もあります。
軽率なプレーの結果ですね。
その1打も、300ヤードのドライバーショットと同じ大切な1打なんです。
僕のプリショットルーティーンは、まずボールの後ろに立ってターゲットライン上に中間目標を見つけます。
だいたいボールの60㎝くらい先に目印を見つけるんです。
そしてアドレスに入る時は、ボールと中間目標そしてピンを見ます。
あとはショットに応じて、2~3回ワッグルしてから打ちます。
【プリショットルーティーン】
ナレーション:ツアープロにとって、プリショットルーティーンは無くてはならない重要な存在。
いつも同じ動きでショットに臨む事が、プレーヤーに安心感と自信をもたらし、プレッシャーの掛かった状況で最高のパフォーマンスを引き出すのです。
プリショットルーティーンの効果を最大限に発揮させるためには、日々の練習を通してしっかりと自分の身に付けておく事が大切です。
さて、番組を通してこれまでに様々なショットの打ち方を披露してくれたレン・マティース。
今日はこれからマティースと生徒たちのスイングを比較して、プロとアマチュアの違いをじっくりと検証します。
【ピッチショット】
ナレーション:最初はピッチショットです。
100ヤード以内からの、細かい距離を打ち分けるピッチショット。
距離のコントロールは、スイングの大きさで調整します。
これをティムのピッチショットと比べてみましょう。
一見まずまずのスイングに見えますが、マティースと比べるとどうでしょうか?
最初に気が付くのは、マティースは左足体重なのに対して、ティムは右に体重が乗っている事です。
そして、最大の違いはダウンスイングの腰の使い方。
ティムの場合は、左腰が浮いてしまっていますが、マティースは腰の高さが変わることなく、ダウンスイングをしっかりと下半身でリードしています。
その結果、インパクトでハンドファーストの形が崩れないのです。
ピッチショットのような小さいスイングでも、下半身を使う事が重要です。
ダウンスイングを左腰から始動させることによって、ダウンブローでしっかりとボールを捉える事ができるのです。
【チップショット】
ナレーション:続いてチップショットです。
グリーン周りからのアプローチで威力を発揮するチップショット。
クラブヘッドのヒールを浮かせ、手首を固定したパッティングのようなストロークでボールをヒットします。
今度はボブのチップショットと比べてみましょう。
この場合もやはりアドレスからバックスイングに掛けてマティースが左足体重なのに比べて、ボブは右に体重が掛かっています。
マティースのダウンスイングは、下半身をしっかりとさせ手首を固定してハンドファーストのままフィニッシュを迎えます。
一方ボブは、体重が右足に乗ったままで、手先でボールをすくい上げるような打ち方になってしまっています。
次に、マティースの下半身の使い方を詳しく見てみましょう。
アドレスでは体重の6割から7割を左足に乗せ、バックスイングでは下半身は全く動かしません。
そしてダウンスイングでは、わずかですが左サイドに踏み込むような感じで下半身を使っています。
ダウンブローで打つためのカギです。
どんなに小さいスイングでも、ダウンスイングからインパクトに掛けては必ず下半身を使います。
【ドライバーショット】
ナレーション:最後はドライバーショットです。
ゴルフで最も遠くまで飛ばせるクラブがドライバー!
ピッチショットやチップショット以上に、下半身の使い方は重要です。
では、ノーリーンのスイングと比較してみましょう。
バックスイングでは、共に右サイドにしっかりと体重移動をしています。
さて、ダウンスイングです。
マティースは左腰がダウンスイングをリードし、インパクトでは赤いラインのところまで動いています。
一方、ノーリーンはダウンスイングで左腰が伸びあがり、赤いラインとの間に大きな隙間ができてしまっています。
ダウンスイングを左腰でリードする事によって、ダウンブローでクラブを振り下ろす事が可能となります。
ドライバーの場合、ボールの位置とティーアップによって、結果的にアッパーブローのインパクトになりますが、基本的なスイングはダウンブローです。
3つのスイング全てに共通するポイントは、ダウンスイングでしっかりと下半身を使っていること。
これが、ツアープロの飛距離と正確性を生み出しているのです。
ナレーション:ゲストのレン・マティースと共にお送りしている、今回のPGAツアーゴルフレッスン。
さて今度はボブからの質問です。
ツアープロは、クラブの番手別に練習の割合を決めているのでしょうか?
レッスンの合間にも、黙々とボールを打っていた練習好きのボブ。
プロの練習方法にかなり興味があるようです。
レン・マティース:たぶん、いくつかの答えが考えられると思います。
まず一つは、僕の場合トーナメント期間中は毎日の練習計画を立てています。
例えば火曜日はこれくらいパッティングをやって、バンカーショットはこれくらいで、あとはショットの練習!
自分のボスは僕自身ですから、やりたいことをやればいいんです。
自分がやりたい練習メニューを、一週間通して決めておくんです。
ですから、練習の割合は日によって変わってきますが、だいたい半分はショートゲーム、パッティング、バンカーショット、ウエッジです。
そして残りの半分が、フルスイング!
これは練習場での話ですよね。
ボブ:そうです。
レン・マティース:練習ラウンドもやりますが、とにかくショートゲームが半分でもう半分はフルショットです。
フルショットの練習は、1球1球に時間をかけますねぇ。
必ずターゲットを決めて、プリショットルーティーンを入れて打ちます。
球数は少ないけど、中身の濃い練習をするんです。
自分としては、できれば練習の8割をフルショットに充てたいと思っているんですが、それではダメだと言うことは良く分かっています。
誰でもドライバーや4番アイアンで打ちたいですよねぇ。
でも、ゴルフで一番大切なのは、バランスの取れた練習だと思います。
アマチュアの場合ショートゲームやバンカーショットの練習はやりたがりませんが、全ては同じように大切なんです。
【ツアープロの練習】
ナレーション:ツアープロの練習は、その多くの時間がショートゲームに費やされています。
常に厳しい戦いに身を置く彼らは、スコアに直結するショートゲームの重要性を誰よりも熟知しているからです。
アマチュアはつい敬遠してしまいがちな、地味なショートゲームの練習。
しかし、ゴルフ上達のためには最も大切なものなのです。
レン・マティース:それから、練習メニューをヤーデージブックに書いて、いつもポケットに入れておきます。
例えば、30分のパッティング練習で、今日は何を達成するかという目標を書いておくんです。
また、バンカーの練習だったらサイドヒルバンカーとか、アップヒルバンカーとか、距離のあるバンカーという風にその日の課題を書いておくんですよ。
すると、それを達成しようと言う気になります。
全部こなせば時間も掛かりますが、何しろ自分で納得した練習ができるようになります。
スコット・サケット:次はノーリーン!
ノーリーン:ミスショットした後の、気持ちの切り換え方を教えて下さい。
プロはミスをしても冷静ですが、私は一度ミスをすると二度と立ち直れないんです。
ナレーション:コース上では調子の波が激しかったノーリーン。
序盤はナイスショットを連発していましたが、一度ミスをするとそこからなかなか立ち直る事ができず、苦悩の表情を浮かべていました。
【ミスショット後の気持ちの切り換え】
スコット・サケット:これは良い質問ですね。
レン・マティース: そうですね!
ただしこれは性格の問題なので、答えは人それぞれだと思います。
僕の場合は、全てのショットで自分のベストを尽くすようにしていますが、それでもいつも完璧なショットが打てる訳ではありません。
だから、前もってそのことを肝に銘じておくんです。
70台のスコアで回ったとしても、思い通りのショットと言うのは1ラウンドでせいぜい5~6回くらいだと思います。
それ以外は、別に大したことのないショットがほとんどです。
常に完璧なショットは打てないと、予め覚悟しておいて下さい。
プロになりたての頃に学んだことですが、1回のミスだけだったらまだ傷は浅いんですが、ミスショットを何回も連発すると本当にシャレになりません。
プロは賞金が掛かっていますからねぇ。
だから僕はミスショットの後に、まず何が悪かったのかを考えます。
気持ちの問題か、あるいはアドレスの方向か、それともスイングの問題か。
ミスショットの後、20秒くらいの間でこの分析を済ませます。
それで怒りを抑える事ができるんですよ。
よく怒ってクラブを叩きつける人がいますよねぇ。
クラブを蹴ったり、怒鳴る人もいますが、そういうのは馬鹿げた事で、僕はやりません。
ミスの原因を分析して、次のショットで上手く打てるようにするんです。
スコット・サケット:今日は貴重な話を色々して頂いて、本当にありがとうございました。
ツアーでの今後の活躍を、お祈りしています。
レン・マティース:こちらこそ、ありがとうございました。
ナレーション:ツアープロに直接話を聞くと言う貴重な経験をした3人の生徒たち。
アドバイスを活かして更なるゴルフ上達を目指そうと、練習にますます熱が入ります。
ティム:(レン・マティースは)素晴らしい人ですね。
とても親しみやすい感じだったし、僕たちアマチュアが経験しているのと全く同じような事を、実はプロも経験している事が分かって話に凄く実感が湧きました。
頭の中でどういう風に考えているのか、とか、いろいろな状況や問題をどうやって乗り越えているのか、とか、とにかく凄くためになりました。
他人の思考プロセスを聞けるなんて、めったにないですからね。
ナレーション:この日のレッスンも、そろそろ終わりに近づいてきましたが、生徒たちが練習の手を緩める気配は一向に感じられません。
いよいよ目前に迫ってきた卒業ラウンドに向けて、彼らの表情は真剣そのものです。
ノーリーン:もっとインサイドから振るようにしないと・・・
完璧だと思ってたのに、実はまだ全然できてないの!
ボブ:頭を使って回りたいね。
もしトラブルになっても、無理なショットを狙ったり、力でねじ伏せたりしようとしないで、頭を使って堅実なプレーがしたいね。
ナレーション:それでは最後にレン・マティースから、卒業ラウンドを控えた生徒たちに贈るメッセージです。
レン・マティース:以前、僕は技術的な課題を6つか7つも抱えてプレーしようとした事があるんですが、はっきり言ってそれは無理でした。
自分ではできると思ってたんですが、それは絶対に不可能です。
1つか2つの課題だったら、コースに持ち込んでも大丈夫かもしれませんが、基本はプレーに集中する事です。
これは、ゴルファーの鉄則みたいなもので、技術的な問題に取り組む場所は練習場と練習グリーンだけ。
全て、そこで解決しなければいけません。
あとは、自分を信じてコースに出たら勝負、そしてプレーに専念するだけです。
コースでは、たとえ変なスイングでも良いスコアが出る事はたくさんあります。
見てくれが悪くても、パットが入ればいいんです。
練習の事は基本的に練習場で済ませておいて、コースに持ち込んでいい課題はせいぜい1つか2つです。
例えば僕の場合だったら、ダウンスイングの始動で左肩をアゴから離す事!
意識するのはそれだけにするんです。
コースでは、もっと重要な事がたくさんあります。
例えば、グリーンのスピードを掴むこと、あとは他の選手に気を取られないようにすること。
プレーが遅いとか、うるさいとか、そういうくだらない事に気を取られると、自分のプレーに影響しますからねぇ。
それから、コースコンディションを気にしないこと。
今は強風だけど、3時間前は無風だったなんて事は、よくある事です。
戦いと言うのはそういう事で、技術的な事を考えている場合じゃないんです。
ナレーション:PGAツアー公認のメソッドで、ワンランク上のゴルフを目指すPGAツアーゴルフレッスン!
次回は、いよいよ卒業ラウンド。
この番組も最終回を迎えます。
これまで12回に渡ってお送りしてきたレッスンの集大成として、3人の生徒たちはどんなプレーを見せるのでしょうか。
どうぞお楽しみに!